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はじめに
我々が日常,患者の状態を知ろうとする場合,脈拍の触診,心音の聴取,血圧の測定,心電図の解読等に加えて,どうしても欠くことのできないのが心臓の大きさと,形の認識である。これには古くから前胸壁心濁音界の打診による感覚的な方法がとられ,心臓の状態の診断と,その予後の判定に充分参考になる所見として用いられてきた。
胸部のX線写真が心臓の大きさと形を視覚的に捉えうるようになり,心臓の各房室の形と大きさの状態が充分推測できるようになった現在でも,打診法による心濁音界の拡大所見は重要さを失っていない。しかし定量的な計測が可能である胸部X線写真ができて以来,これをいかにして各心房心室,または心臓全体の状態と平行した数量で表現できうるかについては,色々な工夫がなされてきた。
心疾患による死亡例の心重量増加は,他の原因による死亡例の心重量と比較すると増大の傾向を強く示すものが多いといわれ,このことは生前における心重量の計測は,心臓の状態の診断と予後の判定には重要な資料となりうるからである。心臓の機能が究極には全身の静脈血を受け入れ,これを全身に動脈血として送り出す単純なポンプ作用を行なうことであり,この作用が心臓各房室の収縮拡張による変形,すなわち容積変化の結果遂行されているが,この心の仕事についての機能の良否の判定は,血行力学的なものも含めて結果的には,心各房室の大きさと形およびその変化,すなわち収縮,拡張の運動状態とこれを規定する各腔の容積および壁の状態により決定され,心になんらかの負荷が与えられた時の適応はその結果として,心拡大と肥大という解剖学的な所見として提出されるから,心容積心重量の計測は心機能の診断とその予後に関して重大な関係を有すると言える。
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