巻頭言
先天性心疾患成因解明への期待
高尾 篤良
1
1東京女子医科大学心臓血圧研究所
pp.843
発行日 1969年10月15日
Published Date 1969/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404202074
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先天性心疾患に対する診療と研究の歩みを,1)解剖学,2)生理学,3)成因学からながめてみると,一部解剖学者,病理学者の興味の対象であったものが,1930年代の後半から40年代にかけて,動脈管開存,大動脈絞窄,ファロー四徴,肺動脈狭窄などが次々と外科治療の対象となり,根治的あるいは姑息的治療が行なわれ,さらに低体温法,体外循環法の発展とともに,諸種の心中隔欠損,ファロー四徴,肺静脈,房室弁,大動脈幹,冠動脈異常なども根治手術の対象となった。最近では,青色症中最も自然死亡,罹病の高かった大血管転位症も生理的根治術が行なわれるようになった。
一方,心カテーテル,血管心臓造影,螢光増倍映画,心音記録,稀釈法,アイソトープスキャンなどいわゆる特殊検査法の発展も,40年代から60年代にかけてめざましく,われわれの先天性心疾患に対する生理学的,病理学的理解を深め,解剖学的,生理学的診断に寄与する所が大きく,現在では外科治療の必要性から従来まれとされ,あるいは複雑とされていた心奇形も術前に正確に診断できるようになった。
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