EDITORIAL
先天性心疾患の現状
高尾 篤良
1
1東女医大心研
pp.1182
発行日 1968年10月10日
Published Date 1968/10/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402223063
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一部学者の研究対象のみであった先天性心疾患も,1930年代の後半から40年代にかけ,動脈管開存,大動脈絞窄,ファロー四徴,肺動脈狭窄などが次々と外科治療の対象となって,根治的あるいは姑息的治療が可能となってきた.また,低体温法,体外循環法の発達は,さらに諸種の心中隔欠損,ファロー四徴,肺静脈・房室弁・大動脈幹・冠動脈異常などの根治へも導いてきた.一方,心カテーテル,血管心臓造影,螢光増倍映画,心音記録,稀釈法,その他のいわゆる特殊検査法の発展も40年代から60年代にかけてめざましく,われわれの先天性心疾患に対する,生理学的・病理学的理解を深め,解剖学的・生理学的診断に寄与するところが大きく,現在では,外科治療の必要性から,従来まれとされた奇形をも術前に正確に診断せねばならなくなってきた.
外科治療適応の拡大とともに,各種先天性心疾患の自然歴の究明もますますその重要性を増してゆく.より正確な自然歴の理解は不必要な手術を少なくさせ,必要なものへの手術適応を拡大させる.先天性心疾患の死亡と罹病は,新生児・乳児期でいちばん高く,これら重症乳児救命可能性の認識と,診断・治療・育成へのよりいっそうの努力が望まれる,チアノーゼ心疾患治療で特記すべきは,ファロー四徴症に続き,大血管転位症に対しても,根治の道がひらけてきたことである.
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