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はじめに
ジギタリスは心不全,不整脈などの治療において中心を占める重要な薬剤である。しかし治療最が中毒量の35ないし65%にまで接近していること1)2),および効果に個人差が大であることはその臨床面での使用に関してしばしば困難な問題を提起する。ジギタリスの吸収,体内での動向,排泄に関する知見はその使用効果を大ならしめ,かつその好ましくない副作用を避ける上において重要な意義を有する。
しかしジギタリスの代謝に関する研究は生物学的,生理学的,化学的方法を組み合わせて営々と行なわれていたものの,その歩みは遅々としていた。そして,この分野における放射性トレーサー化合物の登場はジギタリスの研究に大きな飛躍をとげさせることとなった。
1950年Geilingら3)はdigitalis purpureaを14CO2を含む空気中で育成し,その葉から14Cで標識されたdigitoxinを単離するという方法により放射性同位元素でジギタリスを標識することにはじめて成功した。標識ジギタリスを使用することにより, 吸収,休内の動向,排泄などを正確かつ容易に研究することが可能となり,Okitaらにより先駆的研究が発表されたが,生合成による標識は収量が限られており一般に普及するにいたらなかった。その後,3H標識法の技術的進歩により3H-digitoxin4),3H-digoxin5)など3H標識のジギタリスが利用されうるようになり,最近では3H-digitox—in,3H-digoxinともに米国で市販されるにいたった。
一方液体scintillation counterをはじめとする測定機器の発達,燃焼法6)など試料処理法の考案改良は研究をより容易かつ効果的なものとした。このような進歩とともにジギタリスの代謝に関する研究も著しく進歩をとげ,現在までにヒト,動物を含め正常,病的状態について多くの知見が集積されるにいたった。
われわれも1964年頃より3H-digoxinを用いて研究を行なってきたが,以下にわれわれの得た知見を含めて現在まで判明しているジギタリスの吸収,体内の動向,排泄に関する知見をまとめ参考に供する。
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