特集 InsufficiencyとFailure (呼吸・循環機能を中心とした概念について)
各臓器の立場から
肝機能の立場から
三辺 謙
1
1慶応大内科
pp.35-36
発行日 1969年1月15日
Published Date 1969/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404201982
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Ⅰ.insufficiencyとfailure
ひとり肝の立場からだけではなく,腎その他の立場からも同じと思うが,insufficiencyとfailureとはともに「不全」と訳されている。しかし,insufficiencyという語は,ある臓器が営むべく課せられている機能を適宜に発揮できない状態にあるということであり,failureとはそれよりもひどく,機能がまったく失われた状態と解せられる。
肝の立場からいえば,肝の複雑多岐な働きを営む肝細胞の傷害程度によって比較的軽い肝機能不全(hepatic insufficiency)から,致命的な肝機能喪失(hepatic failure)までの段階がある。このような段階づけは主として臨床的な観察からなされているもので,肝の病理学的変化とは必ずしも一致しない。いわゆる劇症肝炎では,急速に精神神経症状が現われて昏睡に陥り,剖検では肝にmassive necrosisが証明されるが,Popper1)ですら肝の組織学的所見からだけでは,患者が生前肝に不全,昏睡に陥っていたかどうかを判断することはできなかったし,肝性昏睡の状態で死亡したものの肝においても組織学的に壊死をみとめえないこともあった,と述べている。
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