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III.機能面から(つづき)
3.スパイログラフィー
スパイログラフィーは現在肺機能検査のルーチンテストとしてもっとも広く用いられ,各種心肺疾患の換気能力を中心とする病態生理の把握および診断に大きな役割を果たしている。スタリーニング・テストとしての必要条件は,①日常臨床で簡単に行なわれる。②各疾患個有のentityの把握より各疾患群に共通の病態生理学的特徴を把握しうる——の2条件が同時に満足されることである。スパイログラフィーについてこの観点から考えてみると,まず第一の条件は,設備が簡単で,しかも比較的安価であること,わずかの時間で行ないうるし,要領さえのみこめば実施はさほどむずかしくはないことである。最も普及しているレスピロメーターはベネジクト・ロス型レスピロメーターであり,十数万円で入手できるし,またこのレスピロメーターは基礎代謝の測定にも利用できるという利点もある。次に第二の条件は,スパイログラフィーから得られたデータの中には多くの換気力学的要素が内存され,各種心肺疾患群を閉塞性,抱束性および混合性換気障害という共通の病態生理的特徴にスクリーンすることが可能となることである。スパイログラフィーと換気力学の関連性については近年の換気力学の新しい流れ,すなわちchest wallの概念および筋生理学の呼吸生理学への導入によって招来された概念を中心として,換気力学を総合的に把握しようとする流れの理解が根底となる。
現在著者がスクリーニングテストとして採用しているのは,スパイログラフィーおよび動脈血分析である。スパイログラフィーによっては主として換気機能を中心としたいわば"入口の把握"であり,また動脈血分析によっては肺機能の最終像としての"出口の把握"である。したがって両者によって得られたデータを総合的に検討することによって"入口"から"出口"までのどの点が障害されているか一応の目安をつけることができ,さらには各種精密検査の出発点となりうるからである。
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