Japanese
English
綜説
心不全の水・電解質代謝
Water and Electrolyte Metabolism in Congestive Heart Failure.
吉利 和
1
,
関 清
1
,
花岡 和一郎
1
,
荒木 嘉隆
1
,
前田 貞亮
1
,
高橋 政夫
1
,
長坂 昌人
1
,
本田 西男
1
,
伊東 貞三
1
,
大島 大知
1
,
黒澤 斌
1
,
中村 一路
1
,
木野内 喬
1
Y. Yoshitoshi
1
,
K. Seki
1
,
W. Hanaoka
1
,
Y. Araki
1
,
T. Maeda
1
,
M. Takahashi
1
,
M. Nagasaka
1
,
N. Honda
1
,
T. Ito
1
,
M. Oshima
1
,
T. Kurosawa
1
,
K. Nakamura
1
,
T. Kinouchi
1
1東京大学医学部内科学教室
1The 1st Dept. of Internal Medicine, Faculty of Medicine, University of Tokyo.
pp.769-775
発行日 1965年10月15日
Published Date 1965/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404201500
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I.序論
著者らの研究室でほぼ15年前に心不全の浮腫の成因について研究を始めた頃は,戦後アメリカの研究論文が細細と入手されるようになって,前方障害説,後方障害説の論争がまだ耳新しい頃であつた1)。20世紀前半の50年を点綴するこの経緯をつまびらかにすることは,また別の機会があると思われるのでそちらに譲るが,古い部分は実際の測定値に基づかない抽象的な議論が多く,近代的な実証的な研究は最近の20年間に大部分集中していることにまず注意したい。
前方障害説というのは両大戦の間に最も栄えたのであるが,ドイツ生気論の腎糸球体および全身毛細管の能動分泌説に源を発している。すなわち心力の低下に伴う送血量の減少およびその結果としての酸素供給の不足が,上記分泌性の血管壁細胞を障害することが浮腫液の生成および乏尿の原因と推定されたのである2)。もちろんアメリカではドイツほど生気論が表面に出ることはなかったようであるが,この学説がその影響下に組立てられていることは明白である。この学説からの当然の帰結としての治療は酸素の吸入か3),あるいは基礎代謝の人為的低下であることは容易に理解される4)。その現実面での妥当性を顧みなければ,この学説は病因論から治療論まで首尾一貫していたのである。
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