巻頭言
心臓の発作
広沢 弘七郎
1
1東京女子医科大学心臓血圧研究所
pp.859
発行日 1964年12月15日
Published Date 1964/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404201384
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病気の症状の中には発作と名づけられ,時間的に特殊な表現をとるものがある。心疾患には特に発作が多い。発作性心臓頻拍症,発作性心房細動,Adams-Stokes症候群などは主に不整脈に関係した発作である。心臓性喘息は主に心不全に関係した発作である。これと非常に近い関係にあるが,全く同じともいえないのが肺水腫である。冠不全に関しては狭心症,心筋梗塞がある。その他,脳栓塞も臨床上,重要な発作といえよう。チアノーゼ群心疾患の子供にみられる無酸素発作はしばしば生命にかかわる。そのほか,非特異的な結びつきを以つて心疾患に見られる発作も決して少なくない。
このような心疾患例にみられる発作は,いうまでもなく,患者に激しい苦痛を与えるばかりでなく,度々生命の危険を招来する。発作の最中にそのまま死亡することがいくらでもあり得る。臨床上,これ程大事なものはない筈である。ところが現在迄の医学生教育では心臓の発作に就いての教育が非常に少ない。発作という名が示す如く,ある限られた時間に現象がおこるので,予め用意をして学生に見せるわけにもゆかない。殊に,多くの発作が夜間に高頻度におこるので,一層,見る機会が少なくなる。教科書を見ると一応の記載はあるが,簡単に記された文字だけで,実際にすぐ役立つだけの知識は得られない。
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