Japanese
English
症例
粟粒結核症に続発した慢性肺性心の1剖検例
A cace of Cor Pulmonale with Miliary tuberculosis
清水 五郞
1
,
大部 芳朗
1
,
大国 真彥
1
G. Shimizu
1
,
Y. Obu
1
,
M. Okuni
1
1東京大学医学部小児科教室
1Department of Pediatrics, School of Medicine, Tokyo University.
pp.65-68
発行日 1960年1月15日
Published Date 1960/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404200856
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
I.緒言
肺あるいは肺血管の疾患が原因となつて,肺高血圧症を惹起し,右心に負荷がかかり,右心の肥大,拡張あるいは右心不全を来した症候群を肺性心(Cor pulmonale)と言い1),1935年Mc—ginn及びWhite等により初めて記載された2)。慢性肺性心は一般に老人に多く3)4)り,小児科領域における本邦での報告例は我々の調べ得た範囲では寺尾等の12歳4ヵ月の肺線維症,山登等の11歳11ヵ月の重症肺結核症に続発した例に過ぎない。いずれも年長児であり,乳幼児の報告例はない様である。欧米の報告例では所謂原発性肺高血圧症7)8),Pancreatic Fibrosis9)10)が散見される。特にPancreatic FibrosisはRoyceに10)よると70%の高頻度に慢性肺性心を起すというが本邦ではまだ極めて稀な疾患の様である。又原発性肺高血圧症については教室において3ヵ月の乳児の剖検例が報告されている11)。慢性肺性心の原因として成人と同様に慢性気管支炎,間質性肺炎,肺結核症,気管支拡張症,喘息12)等が記載されているが極めて稀である。Royceは3ヵ月の乳児の症例を報告している。我々は2歳9ヵ月の粟粒結核症患児が肺気腫,特発性気胸を起し,肺性心にて死亡した例を経験し,これを生前に診断し,剖検により確め得たので報告する。
Copyright © 1960, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.