Japanese
English
症例
慢性肺性心の1例
A Case of Chronic Cor Pulmonale.
吉村 正治
1
,
佐々 千之
1
Masaharu YOSHIMURA
1
,
Senshi SASSA
1
1東京大学医学部美甘内科
1Department of Internal Medicine, School of Medicine, University of Tokyo
pp.368-371
発行日 1954年11月15日
Published Date 1954/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404200188
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従来報告された慢性肺性心の症例は必ずしも少しとしないが,最近肺機能を中心とした諸種慢性心肺疾患の病態生理学的研究の発展と共に,慢性肺性心の病理病態を究明するに当り,同疾患の障碍生理学的観察が重視せられ,其の研究も活発となつて来た。慢性肺性心の原因と考えられる諸種慢性肺疾患は可成り多種多様であるが,最近Harvey等も指摘している如く1),慢性肺気腫が原因と考えられる場合が最も多く,此の場合には肺気腫による肺血管床の荒癈,anoxia,肺血流量増大及びそれ等に起因すると思われる肺高血圧症発生等が,右心障碍発生に大きな役割を果すことはCournand2)等によつて強調せられている所である。然し乍らMounsey等の16例の重症肺気腫患者の観察報告3)によつても,右心肥大の徴候が認められたのは僅かに2例に過ぎず,又著者等の約20例の重症慢性肺気腫患者観察経験4)5)に於ても,右心肥大,肺動賑圧上昇を伴つたものは僅かに2例であり,慢性肺気腫患者がどの様な時期に,如何なる要因によつて右心障碍を来すに到るかに就ての問題は,尚残された今日の課題である。
今回著者等は慢性肺気腫を素地として成長した慢性肺性心の1例に就き病態生理学的観察を行う機会を得たので,其の病理解剖学的所見の大要と共に以下に紹介する。
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