巻頭言
外科から見た肺高血圧症の問題
宮本 忍
1
1日本大学医学部
pp.197
発行日 1957年4月15日
Published Date 1957/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404200477
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私は長い間肺結核の外科を専攻してきたが,その手技に関する研究もすでに一段落ついたので,最近は肺循環の問題に興味を持つている。かような私の関心は,気胸や成形などを受けて呼吸性不具(Respiratory cripple)に陥つたものや,肺性心(Cor pulmonale)に追いこまれつつある不幸な患者諸君に再起の方法を見つけ出そうとする現実的な要求から生まれたものである。もちろんこの仕事はなま易しいものでないから,非力な小グループの努力で短日月のうちに完成するとは思つていない。
今までの外科療法は肺切除をふくめて,大なり小なり肺機能を障害せざるをえなかつた。気胸と成形とは,同じ虚脱療法でも肺機能の障害程度を異にし,成形ではその程度をあらかじめ予想できたのにたいし,気胸では全く予測できないことが多かつた。気胸の捨てられたのは,その効果に比し,肺機能の犠牲があまりにも大きい場合の少くなかつたからである。現在,最も理想的と考えられている肺切除でも,一区域の切除後に気管支瘻や膿胸を併発した場合には,広範囲の肋骨切除を加えざるをえないから,それによる肺機能の損失は予想外に大きい。
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