巻頭言
呼吸の精神性について(精神肉体医学の一断章)
大森 憲太
1
1慶応大学
pp.65
発行日 1955年2月15日
Published Date 1955/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404200201
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呼吸と循環とを問題にする場合,個々別々にも考えられるが,この両者をその相互の関聯に於いて取扱うことはきわめて適切で,かつ重要なることであること申すまでもない。それは呼吸器と循環器とが機構的にも機能的にも密接な関係にあつていわゆる唇歯補車の関係ともいうべきものであるからである。もちろん呼吸も循環もそれぞれなをその他の身体諸機能といろいろの程度に協関があるが,それ以上に密接にこの両者の関係は成立しているというのである。この『呼吸と循環』という雑誌が特に発刊せられた理由もこのあたりにあつたことと思われる。
しかしこゝに,さらに1つ問題点を提起したいのは,呼吸の重要な—特殊性であつて,それは呼吸の精神性ということである。身体内臟のもろもろの機能,たとえば消化,血行,分泌,生長等はみな無意識のうちに行われ,いわゆる植物性機能であるが,呼吸にはかような半面もあるが,他面多分に精神的影響のもとにあるのである。平静なる呼吸は無意識に行われているが,人はことさらにたとえば深呼吸というようなものをやることが出来,また特殊の自覚をもつてこれを試みる場合がある。神経支配の点からいつても,植物性神経系と動物性神経系(呼吸筋)との二重支配になつている点からもこのことは窺われる。
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