Japanese
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文献抄録
高度の低温下に於ける心筋機能,他
Myocardial Function in Severe Hypothermia.
百瀬 達也
1
1東大美甘内科
pp.214
発行日 1954年7月15日
Published Date 1954/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404200162
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心臓外科に於ては,全身低温下の手術が行われているが,低温には心筋に対し有益に作用する因子と,有害に作用する因子があると考えられる。たとえば低温時の動脈血圧の低下と,血液粘稠度の増加は冠血流を減少させる傾向があるが,他方心筋の代謝率の減少は心筋の仕事を減少させ,冠血流は阻止されることなく血流時間が延長すること等は,心筋に対し有益である。これらの影響を脈波曲線の分析によつて種々検討した。6頭の犬を人工呼吸下に麻酔開胸し,全身の約3分の2を氷水中に浸し,体温を漸次下降させ,左房左室,大動脈の血圧の曲線を記録した。体温が40℃から20.5℃になるまでの圧曲線から,脈搏数の減少,收縮期,拡張期の延長,收縮時間,弛緩時間の延長等がおこる。房室伝導はかなり遲延する。しかし以上からは心筋不全の典型的な所見は見られなかつた。心筋の伸縮力に及ぼす低温の直接の影響を検討するには,正常体温下と低体温下に於ける心搏数を等しくして比較せねばならない。それには正常体温の心臓を迷走神経刺戟によつて緩徐にするか,又は低温度の心房を刺戟して促進させる。20℃の血液温度のもので,心房刺戟により脈搏を大体10程度から60程度に漸次増加させて,その時の左肩,左室,大動脈の圧を見ると,心搏増加によつて圧が変化するが,結局左房,左室,の拡張期圧は上昇し,脈圧が著るしく減少し,心臓内の血液充満度及び充満時間を減少させ,悪影響を与えることになる。
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