Japanese
English
原著
心手術の麻醉
Anesthesia of Heart operation.
河端 武親
1
Takechika KAWABATA
1
1慶應義塾大學醫學部外科學教室
1Dept. of Surgery, Keio University
pp.48-49
発行日 1953年3月15日
Published Date 1953/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404200075
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- Abstract 文献概要
心外科の進歩は,麻酔學の發達を前提としているから歐米において進んだことは當然である。また麻酔學も,心手術の要求から,必然的に發展を促され,その取扱う問題も廣くなつてきた。簡單な手術では,たんに患者の疼痛と不安,恐怖などをのぞいてやるだけで,ほかに大して問題も起らないが,腹部手術では,自律神經の影響が加つてくる。著明な呼吸循環障害,たとえば血壓下降一過性の呼吸停止,不整脈などを見ることがあり,それらを抑制するためには,それだけ麻酔の責任と範圍が廣くなつてくる。さらに開胸術では,開胸時の諸問題が提出され,心手術によつてさらに,困難な多くの問題が加つてきた。すなわち心手術においては,手術による合併症や副作用をふせぎ,なるべく生理的状態を保持することが主な仕事となる。心外科の對象となる先天性心疾患は,一般にHypoxia状態にあり,かつ心筋自身にも變化のあるものが多く,心臟の豫備力は多少とも減少しているのが常である。心疾患の患者でなくとも,開胸によつて著明な生理的變動がおこる。開胸側の側の肺は人爲呼吸をしていても,換氣量はある程度減少する。縱隔は吸氣時,非開胸側へひつぱられるので陰壓が減少し,ある程度の奇異呼吸がおこる。また健側下位では,換氣量も減少する。さらに心附近の大血管操作によつて,循環障碍が突發しやすくなるので,細心の注意が必要となるまた,先天性心疾患手術では,對象は小児が多いので,その對策に特殊性が加つてくる。
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