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NHK朝の連続テレビ小説「梅ちゃん先生」が4月から9月まで放映され視聴率ナンバー1の人気を博した.時代は昭和20年の終戦直後から始まり,ヒロイン梅ちゃんは東邦大学の前身である帝国女子医専の学生である.厳父は医学部の教授で受け持ち患者の若い女性が間質性肺炎という難病で亡くなったという場面があった.しかしながら本当にこの時期に肺線維症・びまん性間質性肺炎という疾患概念がわが国に存在していたのかという疑問が沸いた.というのは肺線維症・びまん性間質性肺炎の総説(最新医学)が本邦で初めて紹介されたのは昭和29年(1954年)のことであるからである.その後,1971年から肺線維症研究会が発足し,1974年には厚生省特定疾患研究班が結成された.かくして本症の研究は40年前から急速に発展するも未だ極めて予後不良な難病である.
特発性間質性肺炎は臨床病理学的に7型に分類されるが,そのなかで最も予後不良な手強い相手が特発性肺線維症(IPF)で発症後の平均生存期間は3~4年と極めて不良である.IPFの詳細な病態は不明であるが,以前は線維化は炎症によって傷害を受けた組織の過剰な修復反応と考えられてきた.しかしIPFの治療においてステロイドなどによる治療成績が振るわないことから炎症は肺線維化の直接的な原因ではないと考えられるようになり,近年では主に肺胞上皮や基底膜が何らかの刺激で傷害された後の異常な修復反応と捉えられている.その際,炎症は副次的な位置付けとして関与し,様々な炎症細胞ならびに間質細胞から産生される種々のサイトカイン・増殖因子の作用により病態が修飾されている.TNF-α,IL-1,IL-6などの炎症性サイトカインは炎症期における重要な炎症促進因子であり,IFN-γの低下やIL-4などの上昇に起因するTh-2へのシフトも線維化の進行に深く関与していることが明らかになっている.さらにTGF-β1などの組織再構築に関与する増殖因子も線維化期において線維化を促進すると考えられている.肺胞性肺炎(市中肺炎)では瘢痕を残さず吸収治癒するのに,IPFでは線維組織の増殖を来して蜂巣肺を結果する.蜂巣肺という終末像を持つ疾患特異性はどの時点でどのように成立するのか? 個々のサイトカイン・増殖因子は,線維芽細胞のコラーゲン産生を刺激するが,その複合は同じコラーゲン産生を抑制する.また,これらのサイトカイン・増殖因子に対する線維芽細胞の反応は,この細胞が静止期にあるのか増殖期にあるのかで異なる.かくしてIPFの特徴である小葉辺縁部に線維化層が現れ,病変の不均一性,新旧混在が生ずるのかもしれない.
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