Japanese
English
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
- 参考文献 Reference
肺癌の遺伝子治療の概要
分子生物学の進歩により,癌が遺伝子異常の蓄積によって発生する「遺伝子の病気」であることが明らかになってきた.自然発生の癌では多くの場合,前癌病変から早期癌,進行癌へと至る過程で癌遺伝子と癌抑制遺伝子の2つの遺伝子群の異常が段階的に関与している1).これらの遺伝子情報により,癌に対する新薬開発の方向性やプロセスは大きく変わってきている.特に,ある特定の分子の機能を阻害する分子標的医薬品の開発は活発に進められており,多くの新薬が臨床試験を経て市場展開を果たしている.
肺癌は現在,本邦における死亡原因の第1位であり,本邦で年間7万人,世界では137万人が亡くなっている.肺癌の遺伝子異常の解析も積極的に進められており,上皮成長因子受容体(epidermal growth factor receptor;EGFR)変異やEML4-ALK融合遺伝子などの癌化責任変異(driver mutation)が明らかとなり,それを標的とした分子標的医薬品による個別化医療が現実のものとなってきている2).機能遺伝子を標的細胞に導入する「遺伝子治療」も広義の分子標的治療の一つであり,全身投与を含めた遺伝子導入技術の開発が進められている.米国国立衛生研究所(National Institute of Health;NIH)の組換えDNA諮問委員会(Recombinant DNA Advisory Committee;RAC)が実施を承認した臨床プロトコール数は2012年8月の時点で1,163となっており,なかでも癌に対する遺伝子治療は797プロトコール,うち肺癌に対するものは51件となっている(表1)3).
Copyright © 2013, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.