Japanese
English
話題
遺伝子治療研究の現状
Present State of Research on Gene Therapy
高久 史麿
1
Humimaro Takaku
1
1国立病院医療センター
pp.72-74
発行日 1993年2月15日
Published Date 1993/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425900533
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I.遺伝子治療研究の現況
遺伝性疾患に対する遺伝子治療は1990年4月にNIHで最初に始められた。対象となったのはadenosine deaminase(ADA)の先天性の欠損のために起こった重症複合免疫不全症の患者で,ADA欠損患者の末梢血中のTリンパ球にADAの遺伝子を導入して患者に戻す遺伝子治療である。
ADA欠損症の患者が遺伝子治療の最初の対象として選ばれたのは,1)ADA欠損症は致死的な疾患である,2)骨髄移植によって治癒し得る,3)ADA遺伝子を導入されたリンパ球はADAを欠いたリンパ球よりも長期間生存し得る,などの理由による1,2)。この遣伝子治療は既に2例のADA欠損症の患児に対して行われ,Tリンパ球数の増加,血清ADA値の上昇,免疫能の回復が遺伝子治療の結果認められたことがいくつかの学会などで報告されている。特記すべきことは従来感染症に対する予防のために家屋外に出ることが出来なかった患児が学校に行くとが出来るようになったことで,その臨床的意義は極めて大きいと考えられる。
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