Japanese
English
特集 薬剤性肺障害の臨床
薬剤性肺障害の診断
Diagnosis of Drug-induced Pulmonary Diseases
服部 登
1
Noboru Hattori
1
1広島大学大学院医歯薬保健学研究院分子内科学
1Department of Molecular and Internal Medicine, Institute of Biomedical & Health Sciences, Hiroshima University
pp.313-318
発行日 2013年4月15日
Published Date 2013/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404102189
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はじめに
近年,薬剤性肺障害を疑わせる症例の数は確実に増加している.過去にはなかった作用機序を有する薬剤の使用増加に呼応しているものと思われるが,このような状況を迎えてもわれわれは科学的根拠を持って肺障害が薬剤によって引き起こされたことを証明する手段を持ち合わせていない.このため,薬剤性肺障害の診断は状況証拠を集めることで行われているのが現状であり,薬剤と肺障害の因果関係を確実に見極めることができる診断基準として現在最も頻用されているのは表1に掲げるものである1).表1に挙げられる5項目がすべて満たされれば,薬剤性肺障害であるとの診断をまず確実に下せるであろうが,問題は第5項目にある被疑薬のリチャレンジである.実臨床現場では偶発的な場合を除いて被疑薬の再投与は容認されないことから,表1に挙げる診断基準の第5項目が満たされるのはほぼ不可能であると考えられ,この点を考慮しても薬剤性肺障害の診断を確実なものにするのは困難であることも容易に想像されるのである.一方で,“益”をもたらすことを目的に使用された薬剤がかえって“害”をもたらしている状況にあることを考えれば,たとえ“疑い”であっても薬剤性肺障害の診断は非常に重要な臨床上の課題であることも容易に理解できるであろう.
これらの点を鑑みながら,本稿は,このたび日本呼吸器学会から発行された“薬剤性肺障害の診断・治療の手引き”2)の内容を踏まえて,薬剤性肺障害の診断についての解説を試みるものである.
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