巻頭言
「後医は名医」について
梶波 康二
1
1金沢医科大学循環器内科学
pp.991
発行日 2012年10月15日
Published Date 2012/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404102067
- 有料閲覧
- 文献概要
若い医学生や研修医に臨床医学を語る場面が増えてきたなかで,認識を新たにしている言葉の一つに「後医は名医」が挙げられる.私が大学病院において,今で言う「初期臨床研修」を開始した頃,他医療機関から紹介されてきた症例のカンファレンスにおいて先輩医師から伝え聞いたのがこの言葉との出会いだったように記憶している.「後から診る医者は情報量が多いから,より適切な診断と適切な治療が可能な立場にあり,まるで名医のように見える」と,当時の私は理解していたし,今もそのように解釈する人がほとんどであろうかと思う.
しかしそんなシンプルな意味だけであろうか.私は次の二つの個人的解釈を付け加えて,明日の医療を担う若手医師とその卵に話しかけることにしている.第一は,「後医になるために労を惜しまない」,ことである.10分前に突然始まった胸痛を主訴に救急受診した患者でも,以前に同様の症状がなかったか,昨日何を食べたか,等々,既往歴を含め病歴を詳細に把握することは,それまでの過程に医師が係わったか否かも含めて,極めて重要な臨床情報になる.モダンな検査を駆使し鑑別診断を進めることも大切だが,臨床情報を地道に収集することで自らを「後医」に位置づける努力が「名医」への第一歩であると強調したい.
Copyright © 2012, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.