書評
―井川 修 著―臨床心臓構造学―不整脈診療に役立つ心臓解剖
平尾 見三
1
1東京医歯大附属病院不整脈センター
pp.1258
発行日 2011年12月15日
Published Date 2011/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404101853
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待望の本が出版された.井川教授の心臓解剖の講演会が開かれると,まず満席になり講演後の質疑応答も活発で時間が足りなくなる.それだけ人気がある.書評子も例外ではなく,臨床的見地から入って精緻を極めた心臓解剖学へ導く井川講演のファンの一人で,この本の登場を心待ちにしていた.多くの解剖図と解説文,それらを体系的に構築・解析する独自のシェーマが加えられて,このたび『臨床心臓構造学』という珍しいタイトル名の本書が上梓された.
目次を俯瞰すると通常の解剖学の教科書でないことがわかる.これまでの解剖書があくまでも解剖専門家の視点で書かれたことを思うと,不整脈臨床家としての視点で本書が書かれていることが斬新であり,嬉しい驚きでもある.不整脈が先にあり,それに関連した解剖学が展開される構成で,これは臨床医にとって大変ありがたい.それぞれの項目を開くと,解剖学の本であるにもかかわらず,心腔内電位図や心臓の3Dmapping像・X線造影写真・透視像がふんだんに取り入れられ,それに関連したマクロ解剖図が示される.この解剖図が素晴らしい.われわれが見たい,知りたいと思うものに回答すべく心臓に割が入れられ,ある時は裏から光を当てた鮮明な写真が掲載されている.推察するに,著者は自分が日常不整脈診療において抱いた心臓解剖・構造上の疑問について,多くの病理解剖を積み重ねながら明【めい】晰【せき】な洞察力をもって一つ一つ粘り強く,かつ徹底的に研究を継続されたのだと思われる.本書はまさにそれらの集大成である.
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