巻頭言
肺機能検査を考える
横山 彰仁
1
1高知大学医学部血液・呼吸器内科
pp.955
発行日 2011年10月15日
Published Date 2011/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404101803
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COPDはその潜在的頻度の高さと死因としての重要性のわりに認知度が低い.昨年は高知城をシンボルカラーの金色にライトアップし,われわれも啓発に努めたのであるが,マスコミ人の喫煙率が著しく高いせいか,彼らの取り上げ方は低調であった.同様に,呼吸器の研究もまた他の分野に比べやや低調である気がする.呼吸器では血糖やHbA1cのように正確なデジタルデータが乏しいのが問題かとも思うが,変動の大きさ,努力依存性の面で劣るものの,肺機能検査がやはり重要である.
スパイロによって初めて診断可能な疾患であるCOPDは,全身性疾患でもあり,狭心症などの心血管疾患が併存することも多い.多病性が特徴である高齢者の疾患であるが,年齢で補正しても有意に多く,逆に心血管疾患にCOPDが潜在しているともいえる.心血管疾患との関係では,かつての主たる関心事は肺性心であった.現代でも中国の呼吸器内科の入院患者の多くが肺性心を有したCOPDであるという.Lancetの報告では,COPDの本邦での死亡率は10万対4.4,中国では130と30倍も多い.しかし,中国と本邦のCOPD罹患率はほぼ同等とされており,この死亡率の差は早期発見の差のように思われる.そして早期診断はスパイロなしにはあり得ない.
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