巻頭言
より良い学生講義を目指して
小泉 知展
1
Tomonobu Koizumi
1
1信州大学附属病院がん総合医療センター臨床腫瘍部
pp.757
発行日 2010年8月15日
Published Date 2010/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404101527
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先日,ある地方機関病院の一般総合内科の新患外来を担当した.その診療中に,その当地を旅行で訪れていた60代前半の男性が,胸痛を訴えてwalk inで来院した.看護師の問診では10年前に心筋梗塞の既往があり,その時の痛みとまったく同様だという.ニトログリセリンを舌下して奥様の運転にて来院した.バイタルは落ち着いていたようなので,床上安静と,心電図,採血の指示をし,現在診察中の患者の処置を優先した後,その患者を診察した.確かに冷汗を伴い苦悶様で左前胸壁を両手で押さえて痛みを訴えている.心電図では,陳旧性の前壁梗塞の所見を認める以外新しい虚血性変化はないように思われた.詳細に問いただすと前夜の夕食後2~3時間後からこの痛みが周期的に出現し,徐々に痛みの持続時間および程度も増悪してきているとのこと.昨夜は“海サラダ”と称した小さく刻んだ生魚類を含んだ野菜サラダを摂食しているとのこと.アニサキスを疑った.上部消化管内視鏡担当の医師に依頼したところ,診断は正しく,適切に処置され無事帰路についた.私にしてみると“胸痛の鑑別診断”にアニサキス症も必要かと教訓的な症例となった.
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