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呼吸器科と循環器科とは,仕事の分担がうまくいかないことがあるようです.筆者のいくつかの病院勤務の経験で,呼吸困難や起坐呼吸を訴える救急患者を,呼吸器科で診るか循環器科で持つかで揉めたケースを何度も目にしてきました.そうした場合,呼吸器科医としての立場からみると,左心不全あるいは両心不全のことが多いように思います.初歩的な鑑別は,気管支喘息とうっ血性心不全(いわゆる心臓喘息)です.心臓喘息というくらいで,喘鳴と起坐呼吸で気管支喘息の重症発作と思って,ステロイドの点滴やら吸入をしてもさっぱり良くならず,胸部X線写真を見て「しまった」と思う経験は,多くの救急医が持っていると思います.まだ医者8年目のことですが,呼吸器科医は一人という中規模病院に勤務していたときのことです.「そんな鑑別はX線写真なしでもできる」と過信していたのですが,全くの診たて違いで,典型的なバタフライ陰影が判明して,先輩の循環器科医に頭を下げたことがありました.そのとき彼は,「イヤー,なかなか難しいね.僕はね,いつもステロイドと利尿剤と両方点滴するんだよ.ステロイドは心不全に悪いことしないからね」と朗らかに語るのでした.こういう「大らかな」タイプのお医者さんは,私はどちらかというと好きです.
最近多いのが,高齢者で基礎疾患あり,呼吸困難,動悸があり,低酸素血症,白血球微増,CRP上昇,BNP著増,胸部X線で心拡大に肺門陰影がみられるといった患者さんです.循環器科医に診てもらうと,心エコーで「心臓がちゃんと動いているから心不全ではない」,「肺に影があるから呼吸器科の担当だ」というのが決まり文句のようです.循環器科の若いレジデントだけでなく,中堅のスタッフも同じ対応のことが多いと聞きます.
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