巻頭言
何はともあれまず禁煙
石井 芳樹
1
1獨協医科大学呼吸器・アレルギー内科
pp.981
発行日 2009年10月15日
Published Date 2009/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404101348
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喫煙は,肺癌をはじめとするほとんどの悪性腫瘍の発症リスクを高め,冠動脈疾患,脳血管障害や呼吸器疾患など膨大な健康障害を引き起こす.したがって,禁煙が様々な疾患の一次予防にも二次予防にも有用であることは論を俟たない.たとえば,喫煙によって2型糖尿病発症リスクは高まるし,2型糖尿病女性が喫煙者であれば心筋梗塞による死亡リスクは,有意に上昇するが,禁煙によってリスクが低下することが知られている.冠動脈疾患による死亡リスクの低下に貢献しうる因子を検討した研究では,コレステロールの低下や血圧の低下よりも禁煙のほうが大きく寄与していた.これらのことは医師が抗コレステロール薬や降圧薬,糖尿病薬を処方するだけでなく,患者の禁煙に強く介入していかなければいけないことを示している.
内科疾患だけではない.股関節または膝関節置換術患者では,術前の6~8週間の禁煙によって術後の縫合不全など合併症が著明に減少する.つまり,病院内には禁煙が必要かつ有効である患者がどこの科にもたくさんいるのである.このような禁煙が必要な様々な基礎疾患を抱えながら入院あるいは外来通院している患者に対して,熱心に禁煙を促す医師もいれば全く喫煙に関心なく,喫煙歴さえ聞かない医師も多い.さらには,自身も平然と喫煙している医師もまだまだ多い.
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