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はじめに
RAS(renin angiotensin system)阻害薬は,1980年代にアンジオテンシン変換酵素阻害薬(angiotensin converting enzyme inhibitor;ACE-I)であるカプトプリルが本態性高血圧に対し使用可能となり,高血圧治療に大きな影響を与えた.また1990年代後半から発売されたアンジオテンシン受容体拮抗薬(angiotensin receptor blocker;ARB)により,ACE-Iの副作用である空咳の問題が解消され,服薬コンプライアンスが改善し,肝代謝の薬物が多いことから,特に腎臓病領域での高血圧治療に対する使用頻度が増した.
RAS阻害薬は,腎に対して主作用である降圧作用以外に尿蛋白抑制作用,メサンギウム細胞の増殖,肥大の抑制や抗炎症作用が認められる.慢性腎臓病(chronic kidney disease;CKD)においては高血圧と尿蛋白が独立した腎障害の増悪因子であることが知られている.そのため血圧を下げ,尿蛋白を減らすRAS阻害薬はCKDの進展を抑制することが分かっている.
本邦ではロサルタン(ニューロタン®),バルサルタン(ディオバン®),カンデサルタン(ブロプレス®),テルミサルタン(ミカルディス®),オルメサルタン(オルメテック®),イルベサルタン(イルベタン®,アバプロ®)(以上発売順)と世界的に使用できるARBがすべて市場に揃っている.今までACE-Iに関する様々なエビエンスが報告されてきたが,近年ARBを用いた質の高い研究が多数報告されるようになってきた.
本稿では腎障害に伴う高血圧の病態生理を説明し,糖尿病腎症,非糖尿病腎症,透析患者,移植患者について,ARBを使用したエビデンスレベルの高い研究を紹介し解説する.
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