巻頭言
若手医師を育てるために
安達 秀雄
1
1自治医科大学附属さいたま医療センター心臓血管外科
pp.771
発行日 2008年8月15日
Published Date 2008/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404101090
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医師不足,医療崩壊が社会の注目を浴びている.「お産難民」や「自治体病院の廃止」が報道され,大きな社会問題となっている.医師の総数は若干増加しているが,それをはるかに上回って医療者への要請,負担が増加しているため,現場での対応が困難になっているのである.加えて医療事故への厳しい社会の姿勢があり,リスクが高く,修練に時間を要する診療科への志望者は減少している.こうした事態が進行しているにもかかわらず,国は総医療費の抑制政策をいまだに変えようとしていない.財政的な裏付けがない状況では,抜本的な医療改善策の実施は当面難しいと考えざるを得ない.自分の将来に敏感な若手医師のなかに,困難が予想される診療科を敬遠する傾向があることは現状では当然とも思える.
しかしそのなかでも,人の命を救う医学,医療のすばらしさに目覚め,自分の役割を自覚して修練に励んでいる若手医師が多数いることも事実である.国として医学,医療にもっと手厚く資源を配分していくことが必要であるが,現場のわれわれ医療担当者もできることから改善策を実行し,能力のある若手医師にわが国の将来の医学,医療を託していかなければならない.若手医師の労働環境を改善すること,能力,労力にみあった給与体系とすることなどは現状でも管理者の努力によってある程度実現が可能な方策である.なかでも,研修,修練中の若手医師に対して,充実した研修,修練を保障していくことは最も重要な課題であろう.医師という職業を選択した以上,自分の能力を伸ばし,人の役に立ちたいと誰もが思っているはずである.この気持ちにきちんと応えることが今求められている.
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