書評
―泉 孝英・中山昌彦・西村浩一 編―医療者のための喘息とCOPDの知識
土屋 智
1
1土屋内科医院
pp.542
発行日 2008年5月15日
Published Date 2008/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404101044
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『医療者のための喘息とCOPDの知識』という新刊本は,近年増加している喘息とCOPDといった慢性の気道・肺病変,両方にスポットをあてて,標準的治療を中心に最新の知見をわかりやすく紹介,解説されている.筆者らの実際の豊富な臨床経験に基づくわかりやすい本であり,『喘息予防・管理ガイドライン』や『COPD(慢性閉塞性肺疾患)診断と治療のためのガイドライン』といったガイドライン本だけでは専門的になりすぎて,一般の医師が読むには意気込みが必要であるが,この本を読めば特に専門的な知識がなくともガイドラインに準じた治療や管理ができるようになっている.さらにこの本では,Q and A方式になっているので,辞書のように使用して必要なところだけ読めば,診断・治療の疑問に的確に答えを探せる工夫がされており,一般診療で呼吸器疾患を扱う医師,開業医が診察室の傍らに置いておく本としてうってつけである.
特にすばらしいのは標準的治療の中心となる吸入療法の薬剤や吸入補助具(スペーサー)が図解入りで解説されている点である.吸入治療は吸入方法を正しく患者に説明し,患者もまたそれを守って初めて十分な効果が得られる治療である.せっかくよい治療がなされながら,うまく吸入ができずに効果がないと誤解する患者や,ステロイド吸入に拒否感のある患者に対して,数ある吸入薬を適切に選択し指導していくうえで非常に助けとなる内容となっている.これは日常診療の現場ですぐに役立つと思われる.
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