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はじめに
北里大学病院は神奈川県相模原市に位置し,東京都町田市に隣接していることから,神奈川県北部・県央地区のみならず,東京都町田・多摩地区の基幹病院として,関連機関との診療連携および医療従事者によるチーム医療を展開し,良質かつ高度で信頼される医療の提供をめざす特定機能病院(診療科目24科,総病床数1,033床)である.われわれの勤務する心臓血管センターは循環器内科55床,心臓血管外科21床の定床76床を持ち,年間延べ入院患者数は約1,500名にのぼる.心臓カテーテル検査は,診断カテーテル検査が年間約750件,冠動脈インターベンションが約350件,カテーテルアブレーションが約100件である.心臓外科手術は年間約190件施行されている.平均在院日数は14.5日で,総看護師数は51人である.
近年,当センターはDPC(diagnosis procedure combination)およびクリティカルパスの導入により,年々,病床回転率が高まっている傾向にある.さらに,入院患者の特徴として,糖尿病,慢性腎臓病,メタボリックシンドロームを基盤にした虚血性心疾患をはじめとする動脈硬化性疾患や,入退院を繰り返す慢性心不全症例の増加はもちろん,最も顕著なことは高齢化社会を迎え,認知症や,眼科・耳鼻科・整形外科疾患を含めた多疾患有病者が増えたことが挙げられる.そのことからも,専門的な看護ケアはもちろん,多様化した看護ケアが求められている.生活習慣病を基盤とする動脈硬化性疾患に罹患した若年・壮年層患者には,医療の急速な進歩による高度な医療が展開された後,積極的なリハビリテーション介入が施され,二次予防対策を積極的に施行している.一方では,入院患者の高齢化に伴い,患者の尊厳を尊重した医療,あるいはQOLを重視した医療など,患者や家族およびその社会的背景を十分に配慮した医療を展開しなければならない.これは慢性心不全末期の症例においても言えることである.つまり,現在の医療現場では,「高度な医療を積極的に進め予防医学を遂行する看護」と「慢性心不全の末期症例や高齢化社会に配慮した全人的な看護」の両者が同時的に求められている.
看護師は病院のなかでは最も人数が多く,ベッドサイドで患者のバイタルや心肺機能など様々なモニターを観察し,さらに患者の移動,食事(経管栄養も含む)や排泄,医師管理下での検査や与薬など,直接,患者に関わる時間が最も多い職種である.特別な場合を除き,経管栄養や与薬は最終的に看護師に委ねられている場合が多い.このような日常の看護業務に加えて,高度な知識と多様性に対応できる経験,人間としての尊厳やQOLを十分に配慮した看護を求められる現状において,看護師がリスク管理におけるインシデントに関わる頻度が最も多くなるのは当然のことである.このことは,2006年度に当院で発生した院内インシデントを報告者別にみると83%が看護師によるものであることからも明らかである.
今後,ますます医療現場における看護師の役割の重要性が高まるなか,当センターにおける看護師が関与したインシデントを少しでも減らす試みとして,医療安全管理室を中心とした予防対策活動と,医療現場におけるチーム医療としての予防活動の試みを紹介する.
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