Japanese
English
Current Opinion
遺伝子からみた弁膜症
Genetic Mechanism of the Onset of Valvular Heart Disease
伯野 大彦
1,2
,
福田 恵一
2
Daihiko Hakuno
1,2
,
Keiichi Fukuda
2
1慶應義塾大学医学部循環器内科
2慶應義塾大学医学部再生医学
1Cardiovascular Division, Department of Internal Medicine, Keio University School of Medicine
2Department of Regenerative Medicine and Advanced Cardiac Therapeutics, Keio University School of Medicine
pp.85-90
発行日 2008年1月15日
Published Date 2008/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404100965
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弁膜症の基礎研究における最近1年間の話題
わが国における高齢者人口の増加および食生活の欧米化に伴い,心筋梗塞,脳梗塞,閉塞性動脈硬化症などの動脈硬化性疾患が近年著しく増加する一方で,加齢変性を原因とする心臓弁疾患も増加傾向にある.変性弁における免疫組織学的研究から,その変性機序は血管動脈硬化のそれと類似していることが指摘されてきた.すなわち,弁最外層にある内皮細胞層の破壊,それに引き続く単球,Tリンパ球などの炎症性細胞の弁内部への浸潤,低比重リポプロテインの取り込み,炎症性サイトカインの放出,弁間質細胞の増殖,細胞外基質のリモデリングおよび石灰化である1~4)(図1).これを受けて,アンジオテンシン変換酵素阻害薬あるいはHMG CoA還元酵素阻害薬(スタチン)が大動脈弁の変性を阻止しうるのではないかと考えられたが,最近の前向き無作為臨床試験ではそれらの効果は必ずしも期待できるものではなかった5,6).
これまで心臓弁膜症の良い動物モデルが存在しなかったため,弁膜症の基礎研究はヒト変性弁の免疫組織学的解析が主であり,発症に至る分子機序はほとんど解明されてこなかった.2002年以降,野生型家兎にビタミンD2を含む高コレステロール食を2~6カ月間与えることにより大動脈弁の間質細胞増殖,骨基質形成,石灰化を来すモデル,いわゆる「大動脈弁狭窄症モデル」が初めて報告された7,8).さらにDroletら9)は,野生型およびLDL受容体ノックアウトマウスに高脂肪高炭水化物食を4カ月間与えると大動脈弁の有意な肥厚と弁口面積の減少が起きることを報告した.
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