Japanese
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Current Opinion
弁膜症の新しい人工弁について
New Artificial Heart Valve for Valvular Disease
古梶 清和
1
Kiyokazu Kokaji
1
1慶應義塾大学医学部心臓血管外科
1Department of Cardiovascular Surgery, Keio University School of Medicine
pp.575-579
発行日 2007年5月15日
Published Date 2007/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404100873
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弁膜症の人工弁をめぐる最近1年間の話題
1 背景
人工弁の歴史は,人工心肺による体外循環下の心臓手術が開始された1950年代の心臓血管外科黎明期,具体的には1952年にHufnagelが下行大動脈にボール弁を植え込んだことに始まる.以後,機械弁の開発では1960年代に入るとStarr Edwardsのボール弁が商品化されて汎用されるようになり,1960年代後半にはBjörk Shileyに代表される一葉型ディスク弁が使用されるようになった.
さらに1977年には二葉弁のSt. Jude Medical弁が登場し,そのlow profileで質量が軽く心拍追従性に優れる特性は市場を席捲するに至った.以後,デザインに関しては細部の相違はあるものの,二葉弁が人工弁の主流となっている.しかしながら,歴史の古いStarr Edwardsのボール弁にしても,その構造上の問題として被覆したcageの組織化が起きる前にボールとの接触により被覆した布が破れるというcloth wearや,シリコンボールへの脂質の浸潤やcageとの接触による衝撃や摩擦により引き起こされるボールの変形,亀裂,縮小といったball varianceにより耐久性に問題があり,20年を過ぎると生存率や再手術率が高くなる1~3)という大きな欠点があるものの,弁閉鎖時の逆流に関しては構造的に存在せず,hinge(pivot)部分で固有の逆流を生じる二葉弁に比べ利点となっている.したがって,それぞれの人工弁は構造上利点を有するとともに欠点も存在し,生体にとって決定的に好ましい人工弁はいまだ存在していない.
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