外科の焦点
人工弁による弁膜症の外科的治療
田口 一美
1
Kazumi TAGUCHI
1
1広島市民病院心臓外科
pp.281-292
発行日 1963年3月20日
Published Date 1963/3/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407203039
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いまや心臓外科は新段階を展開するに至り,人工弁などによるいわゆるReplacement heart sur-geryが最大の焦点となつた.われわれは人工心肺による体外循環技術そのものが学界の話題であつた昭和33年(1958)当初より本邦における斯界にさきがけて,心臓外科の将来の前題としての重症心疾患の外科的療法の研究を志し,それらの一環として人工弁移植の実験的検討を開始し,同年日本胸部外科学会に右心耳,乳頭筋固定型Siliconerubberによる僧帽弁完全移植の成績を発表し,映画を供覧した.その後,昭和35年7月(1960)最初の人工弁移植の臨床例を施して以来,本年11月末までに44例の完全移植例と15例の挿入術を重ねるに至り,漸やく軌道にのつた感があり、最近では二弁同時移植例の施行やHoisted woven teflon tricuspid valveの米国への輸出にまで展開できる段階となつた.この間の道は決して平坦なものでなく,われわれの研究,長時間体外循環,重症心不全,各種器具の考案等,すべてこの目的達成のために行なつてきた感があるが,ここにわれわれの人工弁完全移植の現況を紹介して,期界の発展に資したいと念ずる.
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