巻頭言
国産の細胞傷害性抗悪性腫瘍薬の開発―トポイソメラーゼ阻害薬について
益田 典幸
1
1北里大学医学部呼吸器内科
pp.713
発行日 2007年7月15日
Published Date 2007/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404100833
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現在,抗悪性腫瘍薬の開発の中心は分子標的薬剤であるが,本邦で開発された世界に誇るべき細胞傷害性抗悪性腫瘍薬の2つについて述べる.トポイソメラーゼ(トポ)阻害薬はトポとDNAの反応中間体であるcleavable complexに強固に結合し,三者複合体として安定化させることによりDNAを切断し,抗腫瘍活性を示す.
1) トポI阻害薬
カンプトテシンは1966年Wallらによって中国原産の「喜樹」から抽出・単離された.非臨床試験では優れた抗腫瘍効果を示したが,臨床第I,II相試験での低い奏効率と有害反応のために1972年に開発は断念された.しかし,HsiangらによるトポI抑制という新しい作用機序の発見により再度脚光を浴び,世界中で水溶性を高め,毒性の低い誘導体の合成が精力的に行われた.1978年にヤクルト本社中央研究所の横倉らはこの研究に着手し,1983年に幾多の新しい合成法を駆使し,画期的な水溶性のイリノテカン(CPT-11)の半合成に成功した.CPT-11はカルボキシルエステラーゼにより活性代謝物であるSN-38に変換される(図).SN-38は試験管内ではCPT-11より百~数千倍抗腫瘍活性が高く,CPT-11はSN-38のprodrugと言える.1986年から臨床第I相試験が開始され,苦節10年にわたる臨床研究の結果1995年に承認が得られている.多くの癌腫に適応を持つが,小細胞肺癌と大腸癌では必須の薬剤となっている.
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