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わが国でも薬剤溶出ステント(DES)が保険償還されてから2年以上が経過し,日常のインターベンション診療に定着した感がある.再狭窄率が極めて低いという特性を生かし,今までバイパス手術の対象と考えられていた多枝疾患に対してもpercutaneous coronary intervention(PCI)が行われるようになり,また現場では急性心筋梗塞に対するprimary PCIの際にも一部DESが用いられるケースが増えていると聞く.急性心筋梗塞に対するDESの有用性と安全性は最近の欧米の臨床試験でも確認されるに至っている.皮肉なことにわが国では,従来のステント(BMT)の価格が非常に高く設定されていたため,欧米に比べ,DESとBMTの価格差が少ないことも,DESの使用に拍車をかけていると思われる.
1~2年の比較的短期のフォローアップデータも明らかにされるにつれDESの未来は明るいと考えられるようになっていた.しかしながら,以前よりDESによって死亡や非致死性心筋梗塞は減少しないことは報告されていたことに加えて,昨年後半には慢性期の血栓形成によるイベントが増加するというBASKET Lateや,血栓性イベント抑制のためには長期にわたりチエノピリジン系薬剤を投与することが必要であることを示唆するDuke大学のレポートも発表された.これらの一連の報告はDESの安易な使用に対して警鐘を鳴らす結果となり,米国食品医薬品局(FDA)はチエノピリジン系薬剤を1年以上投与することを勧告するに至った.もっとも血栓性イベントの少ないわが国ではj-CYPHER registryの1年目のデータをみる限りではDESの成績には大きな問題はないように思えるが,やはり今後の長期フォローアップが必要である.
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