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高齢者に対する心臓手術をめぐる最近1年間の話題
高齢者は動脈硬化や潜在的な臓器障害を抱えていることが多く,さらに手術による延命効果は若年者に比べて少ない.また,術後のサポートなど社会的な背景の問題もある.このため高齢者に対して適正な手術適応を判断し効果のある治療を行っていくには,手術の危険性と利益の現状を正確に把握することが大切である.
まず,高齢であることが手術の危険性となるのか,高齢者における危険因子とは何かを考える必要性がある.Alexanderらの大規模な報告(80歳以上4,743人)からは,合併症のない待機手術例において手術死亡率は冠状動脈バイパス術(CABG)で4.2%(若年者1.1%),CABG+大動脈弁置換術で7.0%(同4.0%),CABG+僧帽弁置換術で18.2%(同7.1%)であり,いずれも高齢者が高く,体外循環を用いた心臓手術では高齢は明らかな危険因子と考えられた1).しかし,近年では少数例の報告であるが,合併症のない待機手術で比較的良好な成績が報告されている.Averyらは,104人の80歳以上の心臓手術患者を65~75歳の患者と比較し,手術死亡率は高齢者が約3倍(13.5% vs 3.4%)であったものの,待機のCABGでは2.0%であった2).これは米国胸部外科学会(STS)のデータベースでの66~70歳の死亡率(1.8%)と遜色ない結果である.死亡の危険因子としては,緊急手術と多弁手術があげられた.またGattiらは,術後重症合併症に対する危険因子として,NYHA4度,CCS4度,長時間の遮断時間であったとしている3).このように重症例での手術死亡率は依然として高いが,合併症の少ない高齢者待機手術では,良好な成績が報告されるようになっていて,われわれも高齢のみでは大きな危険因子とは考えておらず,重症化する前に早期の治療を行うことが大切である.
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