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いまさら言うまでもなく喫煙は呼吸器と循環器に多大な悪影響を及ぼす.禁煙の勧めは「肺の日」市民公開講座など各種講演会や,新聞雑誌などのメディアで繰り返し目にするところである.読者のなかにもその種の講演を経験したり,近々その予定がある人が少なからずいると推測する.また,病院機能評価機構の点検項目のなかにも病院内禁煙があげられており,認定のためにはそれが前提となっている.それほど世をあげて禁煙運動が盛んであるにもかかわらず,日本人の喫煙率の低下は芳しくはない.厚生労働省の国民栄養調査(というのもおかしいが)によると,平成15年の年齢階級別喫煙率の平均は,減少しているどころか男性で46.8%,女性で11.3%と微増している(日本たばこ産業株式会社の調査によると,男女とも微減となっているが).その上昇に寄与しているのは男性では分別盛りの50歳代であり,女性では20~30歳代である.国家の借金が中央政府と地方自治体併せて800兆円と言われており,孫の代までその借金のつけがまわることが確実になっていることなどを背景に,国民医療費の抑制が国是として叫ばれている時代である.この上さらに喫煙関連の医療費の増加は,是が非でも避けたいところである.
今から100年以上前であるが,近代日本の歴史のなかで禁煙運動に大きな貢献をした根本 正(ねもと しょう)という代議士の名前は意外と知られていない(http://www.nurs.or.jp/~nemoto/nemosho.html).彼は早くも明治32年(1899年)12月に賛同する4人の議員らとともに18歳未満に適用する幼者喫煙禁止法案を共同提案した.当時の日本では今日の一部の発展途上国と同様に,小中学校の校内で堂々と喫煙する生徒が少なからずみられ,社会問題となっていた時代である.喫煙が身体に良くないとの一般的認識はあったが,それを取り締まる法制度はまったく未整備であった.
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