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肺高血圧症の最近の全般的話題と展望
原発性肺高血圧症(PPH)を含む肺動脈性肺高血圧症(PAH)は,肺動脈圧の上昇(平均肺動脈圧>25mmHg)により右心不全から死に至る進行性の予後不良疾患である1).Idiopathic PAHであるPPHのほか,膠原病,先天性心疾患,肝硬変,HIV感染,やせ薬などが2次性PAHの原因となる.PAHの病理組織学的特徴には,特に重症型において,前毛細管性肺細動脈の閉塞機転を伴う病変(plexiform lesion)の存在が挙げられる.これは,中膜の肥厚に加え,内膜のlaminar fibrosisを伴う細胞増殖を特徴とし,しばしば内腔に血栓形成を伴っている.このplexiform lesionにおける内膜の細胞増殖は従来は平滑筋細胞の増殖と筋線維芽細胞への変化と考えられてきたが2),最近は様々な表現型異常・細胞機能不全を伴う血管内皮細胞の増殖と考えられるようになってきている.これらの議論は最終決着をみたわけではないが,PPHにおけるplexiform lesion中の血管内皮細胞の単一性増殖(monoclonality)が示され3),2次性肺高血圧症では内皮細胞のポリクローナルな増殖が示されて以来,後者をサポートする多くの論文が報告されてきている4).ごく最近,PPH患者16名中10名(62%)の肺細動脈病変よりhuman herpesvirus 8(HHV-8)の抗原や遺伝子が確認され,HHV-8感染がPPHの病因あるいは血管内皮細胞機能障害を伴うplexiform lesion形成のトリガーである可能性が示され5)話題になっている.
本稿では,肺高血圧症の最近の話題を特に肺動脈内皮細胞の異常というテーマを中心に述べる.
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