Japanese
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特集 非結核性抗酸菌症の病態と治療
非結核性抗酸菌症の疫学
Epidemiology of Infection by Nontuberculous Mycobacteria
露口 一成
1
,
鈴木 克洋
1
,
坂谷 光則
2
Kazunari Tsuyuguchi
1
,
Katsuhiro Suzuki
1
,
Mitsunori Sakatani
2
1独立行政法人国立病院機構近畿中央胸部疾患センター臨床研究センター感染症研究部
2独立行政法人国立病院機構近畿中央胸部疾患センター臨床研究センター
1Department of Infectious Diseases, Clinical Research Center,National Hospital Organization Kinki-chuo Chest Medical Center
2National Kinki-chuo Chest Medical Center
pp.561-564
発行日 2004年6月1日
Published Date 2004/6/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404100308
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はじめに
非結核性抗酸菌症(非定型抗酸菌症)とは,人工培地で培養可能な抗酸菌のうち結核菌群以外の菌による感染症のことをいう.非結核性抗酸菌は,多くが環境常在菌で水分や土壌の中に生息しており,日常的に曝露を受けていると考えられている.したがって,非結核性抗酸菌症の発症には宿主側の因子が強く関わっていると推測され,ヒト-ヒト感染は臨床上無視し得るとされており,これが伝染病である結核との最も大きな違いである.さらに,環境常在菌であるために,臨床検体から少量の菌が一度検出されただけではcontaminationの可能性が否定できず,必ずしも感染症とはいえないことにも注意が必要である.
非結核性抗酸菌症の場合,伝染病ではなく届出義務がないので,結核のように全体としての正確な疫学データを得ることはできない.そのため非結核性抗酸菌症の疫学についての報告は,ある限られた施設において集計されたデータによっている.わが国および諸外国から多数の報告があるが,多くは近年の非結核性抗酸菌症の増加傾向を指摘している.これは,CTや気管支鏡検査などの診断技術が発展して,より軽症例が見つかるようになったこと,同定技術の進歩により従来結核とされていた症例が正確に診断されるようになったことなどの要素も考えられるが,多くの報告から症例自体が増加傾向にあることは確かなようであり,内外の専門家も指摘するところである1,2).
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