巻頭言
臨床研究と倫理性の遵守
曽根 三郎
1
1徳島大学医学(分子制御内科学)
pp.117
発行日 2004年2月1日
Published Date 2004/2/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404100254
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21世紀に入り,ヒトゲノムの解読が完了したのに伴い,臨床研究の方法論は大きく変貌を遂げている.現在,死亡者数のナンバー1は悪性腫瘍であるが,それに限らず,いろいろな難病も分子生物学,ゲノム医学,最近ではプロテオミクス医学の展開,さらに分子画像学の導入も飛躍的に進み,遺伝子レベルから蛋白分子レベルでの解析が網羅的に,かつリアルタイムに臨床の場で可能となっている.同時に,創薬,育薬,先端医療の創生にも大きなインパクトを与えている.
ここに来て注目されているのが,研究資源としての臨床材料の確保とその倫理性があげられる.今年の7月30日に「臨床研究に係る倫理指針」が省令として交付された.臨床研究全般を対象とする基本的な指針として,インフォームドコンセントの義務化,人権保護,倫理性の確保,研究者と臨床研究機関の長の責務などが明記されている.特に,細則として,「医学系研究」は,人を対象とするもの(個人を特定できる人由来の材料およびデータに関する研究を含む)を指すが,医学に関する研究とともに,歯学,薬学,看護学,リハビリテーション学,予防医学,健康科学に関する研究も含まれると規定されている点に注目したい.もちろん,内容的に全く問題がないとはいえないが,このような倫理指針が出てきたこと自体は喜ばしいことである.
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