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心エコー組織ドプラ法をめぐる最近1年間の話題
超音波パルスを送信すると,血流,心臓壁,弁などの動きからドプラ信号が得られる.このうち,血流から得られるドプラ信号のみを取り出して解析しているのが従来のカラードプラ法であり,心臓壁や弁などの動きに由来する信号だけを取り出して解析するのが組織ドプラ法である.現在のところ心臓壁に由来する信号を取り出しての解析が大半であり,サンプルボリュームを心臓壁局所の1点,特に僧帽弁輪部におき組織ドプラシグナルを捉え同部の運動速度波形を記録する方法が最も広く日常臨床において用いられている1).
この心筋局所の1点で評価することの問題点は,心臓全体の運動や他の部位による牽引(tethering)の影響を受け,正確な局所心機能評価が困難な場合が生じてしまうことである.この限界を克服すべく開発されたのが,ストレインレートあるいはストレイン法である.この方法は従来の組織ドプラ法を応用し,局所心筋での同一超音波ビーム上にある2点の組織の運動速度からその2点間の距離の心周期にわたる時間的変化を計算し,ストレインそしてストレインレートを算出することで,心臓全体の運動や他の部位による牽引の影響を可能なかぎり排した形で局所心筋の収縮,進展を評価することを可能としたものである2).ストレインの本来の言葉の意味は「歪み,歪みの程度」ということであり,2点間の最初の距離をL0,ある一定時間後の2点間の距離をL1とし,L0-L1=dLとすると,ストレイン(S)=dL/L0となる.ストレインレート(SR)は,「歪むスピード,速度」ということであり,SR=dS/dtとなる.S=dL/L0であるのでこれを代入すると,SR=d(dL/L0)/dt=(dL/dt)/Lとなる.dL/dtは距離の時間微分であり,すなわち速度(V)であるので,SR=dV/Lとなる.すなわちストレインレート(SR)は,距離がL離れた2点の速度差dVをその間の距離Lで除したもの,ということになる.2点の速度差dVは組織ドプラ法で計測でき,その計測値を用いてストレインレート,ストレインを算出できることになる.
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