Japanese
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連載 プライマリ・ケアのための呼吸・循環器診療①
問診―胸痛
Diagnostic Approach for Cardiovascular and Respiratory Diseases in Primary Care(1)―Medical Examination by Interview:Chest pain
赤石 誠
1
Makoto Akaishi
1
1北里研究所病院内科
1Department of Medicine, Kitasato Institute Hospital
pp.407-410
発行日 2006年4月1日
Published Date 2006/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404100193
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1症状から疾患に辿り着く
症状があるとその症状を来す疾患が想起される.しかし,症状から疾患を特定することは非常に困難である場合が多い.問診により95%は診断がつく.しかし,循環器疾患の症状は「胸痛」,「呼吸困難」,「失神」,「動悸」の4つに集約されるが,その症状だけで疾患が特定されることはない.そこに問診の重要性がある.ただし,突然出現した下肢の麻痺(大動脈解離)とか,下血(腹部大動脈瘤の破裂)など,思いもよらぬ症状が循環器疾患の症状になることもあるので,アンテナを高くして問診をしなくてはならない.
1. 痛みについて考えてみよう
胸痛を来す疾患というと,急性心筋梗塞症,肺塞栓症,大動脈解離がまず列挙される.おそらく,学生時代にはそう教わったはずである.しかし,胸痛を訴える肺塞栓症は少ない.むしろ,突然出現した呼吸困難発作のような不快感である.どうも欧米人の胸痛と日本人の胸痛には異なったイメージがあるのかもしれない.これは,日本人の腰痛と欧米人のback painが同じものであるという事実からもみられる.突然性は,欧米人にとっては痛みであり,日本人は突然出現しようがしまいが息苦しいという表現のほうが前面に立つのであろう.急性肺塞栓を胸痛の代表的疾患に入れる前に,患者が表現する胸痛が,疼痛なのか,苦痛なのかを判断する必要がある.医学でいう胸痛は,胸の苦しみである.胆石発作のような疼痛が胸にあるのではない.そのような疼痛は心膜や胸膜の痛みである場合が多い.科学的にいうと,化学物質による痛みなのか,物理刺激による痛みなのかという違い,呼吸ができないという不安が痛みとして自覚させている場合もありうる.
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