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睡眠時無呼吸症候群と循環器疾患をめぐる最近1年間の話題
睡眠時無呼吸症候群(sleep apnea syndrome:SAS)は,日中の眠気,倦怠感や集中力低下のため,生活の質(QOL)の低下に関与し,社会的な問題として近年広く知られるようになった.SASの診断は,前述の自覚症状が伴い,かつポリソムノグラフィ(polysomnography:PSG)で無呼吸低呼吸指数(apnea hypopnea index:AHI)が5以上と定義されている.Wisconsin州の健常者602名の検討では,その有病率は男性4%,女性2%であった.しかし,自覚症状のないAHIが5以上の症例,すなわち睡眠時呼吸障害(sleep disordered breathing:SDB)を有する頻度はさらに高く,同報告では男性24%,女性9%であり,50歳代に限定すると,それぞれ31%,16%と高頻度であった.元来,咽頭部での上気道筋群の弛緩やアデノイド,舌などの軟部組織による気道閉塞に起因した閉塞型睡眠時無呼吸(obstructive SAS:OSAS)は肥満者に多く認められると認識されていたが,肥満がなくとも,小顎症に代表される比較的日本人に多い解剖学的異常にはOSASを高頻度に発症すると考えられている.欧米人と比較し高度肥満者が少ない本邦であっても,診断されてない有症状SAS患者が多く存在することが認識されるようになったが,その診断法や取り扱いに関しては未だ一定した見解がないのが現状である.
また近年,種々の循環器疾患においてSASの合併が報告され,夜間低酸素血症からの交感神経活性亢進,カテコラミン濃度の上昇が心血管系イベントの成因または増悪因子として重要視されている.Mooeらは,狭心症患者に対する検討で,AHI>10の患者が男性37%1),女性30%2)に認められ,年齢,性を併せた対象より有意に高値であったと報告した.また,臼井ら3)が,虚血性心疾患患者79例中AHI>10のSAS患者が35%存在したと報告し,本邦でも虚血性心疾患患者における睡眠呼吸障害の有病率は海外とほぼ同程度であることを示した.
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