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はじめに
炎症性腸疾患(inflammatory bowel disease ; IBD)は,再発性・持続性の炎症により腸管へのダメージが蓄積し,種々の腸管合併症や炎症性発癌を来す慢性疾患として捉えられている.従来,内科治療ではIBDの腸管予後を改善することは困難と考えられていた.しかし,抗TNFα(tumor necrosis factor α)抗体製剤に代表される内科治療の進歩により,多くの症例で“症状の改善”だけでなく“腸管傷害の改善”を目指すことが可能となってきた.現時点では,抗TNFα抗体製剤のIBD腸管予後改善効果を直接証明した報告はないが,長期予後改善の観点から治療目標を設定し治療の適正化を図るT2T(treat to target)ストラテジー1)の実践が可能となったことは,IBD診療における大きな進歩であろう.
STRIDE II(selecting therapeutic target in inflammatory bowel disease II)では,IBD診療における長期目標として,患者QOL(quality of life)の正常化,身体的障害の消失に加えて内視鏡的治癒が挙げられている2).しかし,内視鏡的治癒を長期目標とすることに対して概ねコンセンサスが得られている潰瘍性大腸炎(ulcerative colitis ; UC)においても,評価方法や定義の問題,組織学的治癒を目指すことの是非が議論されている.Crohn病(Crohn's disease ; CD)においては,小腸病変評価の必要性,腸管合併症を有する症例における画像評価の問題,全層性治癒評価の妥当性といった解決すべき多くの問題がある.
本稿では,UCおよびCDにおいて“粘膜治癒”を治療ターゲットとした場合の問題点について簡単に触れる.なお,近年では“粘膜治癒”は“内視鏡的寛解”に加えて“組織学的寛解”の基準も満たした場合を指すが,本特集号のテーマを鑑み“内視鏡的寛解”の意味で“粘膜治癒”の用語を使用した.
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