Japanese
English
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 参考文献 Reference
はじめに
胃癌の診断学は大きく変わった.内視鏡検査(当初は胃鏡)で胃癌を診断することが可能となり,約100年が経過し,この間,胃癌の診断学は進行癌から始まり,その初期像を求めて早期胃癌が診断されるようになり,本邦独自の詳細な内視鏡的分類が確立された.早期胃癌を診断する内視鏡所見として,隆起,陥凹,凹凸不整,島状隆起,はみ出し所見,まだら発赤,褪色,粘膜ひだの蚕食像,ひだの途絶など,多くの用語が作成され,用いられてきた.さらに,拡大観察やIEE(image-enhanced endoscopy)など画像解析技術が進歩すると,pit patternからの診断,微小血管構築像や表面微細構造による診断が可能になり,通常観察では診断が困難な症例も拾い上げることができるようになった.
一方,H. pylori(Helicobacter pylori)感染が消化性潰瘍や萎縮性胃炎のみならず,胃癌の原因であることがわかり,2013年2月にH. pylori感染胃炎が除菌の保険適用となったことから,H. pylori感染胃炎に対して積極的に除菌治療が行われるようになった.もともとH. pylori感染率そのものが低下しつつある状況1)にH. pylori除菌が拍車をかけた結果,日々の内視鏡検査で経験する症例は,H. pylori未感染胃かH. pylori除菌後の胃粘膜となってきている.
したがって,日常臨床で発見される胃癌も,胃底腺型胃癌やラズベリー型胃癌に代表されるH. pylori未感染胃に発生する胃癌と,H. pylori除菌後に認められる胃癌が著しく増加している.H. pylori未感染胃に発見される胃癌の形態については明らかになり,形態像を理解しておけば診断は容易である2)〜4).高齢者内視鏡医である筆者も,これまで,少なくとも30例以上のH. pylori未感染胃癌を発見している.一方,内視鏡診断が難しいのがH. pylori除菌後発見胃癌で,病理組織像に裏付けられた内視鏡的特徴をよく理解しておく必要があり,本特集号が企画された.
Copyright © 2022, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.