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JCOG(Japan Clinical Oncology Group)0607の結果を踏まえ,2018年に「胃癌治療ガイドライン」が次のように改訂された.すなわち,早期胃癌に対する内視鏡的粘膜下層剝離術(endoscopic submucosal dissection ; ESD)の絶対適応病変として“①2cmを超えるUL0のcT1a,分化型癌,②3cm以下のUL1のcT1a,分化型癌”が追加された.また,“③2cm以下のUL0のcT1a,未分化型癌”もeCura Bとされていたが,2020年2月発行の「胃癌に対するESD/EMRガイドライン(第2版)」では絶対適応病変に格上げされた.これらを限りなく過不足のないものにするためには,詳細な術前診断が求められるのが必然である.UL合併病変が適応に加えられたことによりULと癌浸潤との鑑別はもちろんだが,ULの程度や面積を術前に知ることでESDの技術的難易度を予測することも可能となるだろう.pSM 500μmまでの浸潤にとどまる癌の術前診断がいまだに難しいのも事実で,少なくともSM massive癌=cT1b2をESDするover indicationにより患者に時間的あるいは余剰な経済的負荷をかけるようなことは避けなければならない.これらの課題に関しては,超音波内視鏡(endoscopic ultrasonography ; EUS)診断のKnack&pitfallも含め辻井ら,平澤らの記述に明るいので熟読を勧めたい.また,2cmを超えるcT1a病変が絶対適応病変となることで境界診断すべき領域が絶対的に増える,すなわち検査にかける時間も増加する.加えて病変径が大きくなることにより“組織混在”という課題も念頭に置かなければならない.本誌読者には既知と思われるが,組織混在型のほうが単一組織型に比べて脈管侵襲率が高く予後が悪いことも知られている.これが術前検査,特にIEE(image enhanced endoscopy)を用いて術前にどこまで予測できるのか? 中でも,金坂らの報告には基本的な検査の進め方や解釈方法がコンパクトにまとめられているので初学者にも理解しやすい内容となっている.
以上の課題を本邦ならではの視点/切り口でUp-to-dateの現状を知るべく本特集を組んでみた.術前検査はほどほどにして,まずは切除してから評価する,といった哲学やメンタリティが日本人にそぐわないと思うのは小生だけではあるまい.
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