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編集後記
小澤 俊文
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1総合犬山中央病院消化器内科
pp.1217
発行日 2022年8月25日
Published Date 2022/8/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1403202988
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1950〜70年代,本邦において国民病とまで言われた胃癌に関して,研究者たちの絶え間ない努力によって画像診断学,内視鏡治療や外科手術,病理診断学など世界に冠たる診療技術が築かれてきた.しかし,今なお年間約13万人が胃癌に罹患し約4万3,000人が死亡している.これは,胃癌を効率的に早期発見し,適切かつ高精度の治療に結びつけていく胃癌スクリーニング体制が不十分であり,受診率・精検受診率・治療後経過観察などの追跡調査が十分にできておらず,“組織型検診”としての精度管理体制が整っていないことによる.近年では,超高齢化や医療費削減への対策として,厚生労働省からPHR(personal health record)システムや人工知能(artificial intelligence ; AI)を用いたデジタル管理が考案されている.予防医療の推進においても同様に積極的なデジタル管理が必要であるが,一方で個人情報管理など諸問題も存在する.
また,胃癌発生の主たる原因であるH. pylori(Helicobacter pylori)感染率の低下や除菌治療の普及により,背景胃粘膜が変化したことで,若年層での胃癌罹患率の低下も予測されている.加えて,食生活を中心とした生活習慣の変化や胃酸分泌抑制薬の使用頻度増加などにより日本人の胃粘膜は大きく変化しており,それゆえに胃癌スクリーニングを取り巻く環境も大きく変化しているのは当然と言える.まずは,これらを歴史経過も踏まえて俯瞰的に記された春間論文を熟読されたい.また,病理組織学的に背景胃粘膜に迫った和田論文も読み込むことで理解が深まるであろう.
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