私の一冊
1992年第27巻6号「早期大腸癌の病理診断の諸問題—小病変の診断を中心に」
海崎 泰治
1
1福井県立病院病理診断科
pp.1169
発行日 2019年7月25日
Published Date 2019/7/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1403201807
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病理診断は元来あいまいなものである.癌の診断一つをとっても,核の異型,腺管の異型は数値で表しきれるものではない.たとえ数値で表されていても,癌とそれ以外のはっきりとした基準(転移の有無,遺伝子変異など)がなく,一対一対応させることは難しい.そのあいまいさゆえ,癌の病理診断基準は各病理学教室門下における一子相伝,門外不出の秘伝の技として,伝承されてきたものと考えられる.
意外に思えるかもしれないが,病理医にとって癌の診断基準を議論することは最大のタブーで,私の知る限り,癌の診断基準を公開の場で議論した会や書籍は見たことがない.それに果敢に挑んだのが,「胃と腸」第27巻6号である.内視鏡的切除を含む大腸腫瘍の切除標本33症例について,8名の病理医が名前まで明かして病理診断を行っている.結果は本編を確認していただきたいが,見事なまでにバラバラである.
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