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本号の主題である「ESD時代の早期胃癌深達度診断」を仙台厚生病院の長南,順天堂大学の八尾,早期胃癌検診協会の長浜の3名で企画した.近年,早期胃癌の多くがESD(endoscopic submucosal dissection)で治療される時代になり,より一層深達度診断が重要になる中で,IEE(image enhanced endoscopy)などの新しいモダリティーを含め,現状の深達度診断の精度と限界および診断困難な病変がどのようなものなのかを明らかにすべく,本号が組まれた.
本号では,まず病理の立場から伴が切除標本のマクロ像からみた深達度診断を既知の早期胃癌の粘膜下浸潤の肉眼所見と組織学的所見を対応させ,明瞭に解説した.島岡は内視鏡,X線,EUS(endoscopic ultrasonography)によるそれぞれの診断能を検討し,X線検査を用いることによって診断の上乗せ効果があることを報告した.ESD時代におけるX線の役割を明確に示し,内視鏡,X線,EUSを病変に応じて相補的に用いることにより,過不足のない情報を得ることが重要であることを強調している.通常・色素内視鏡による深達度診断として,丸山は大きさ・肉眼型別検討を中心に解説し,ESD適応や,適応拡大病変か否かを判断する際に注目するのは大きさ,肉眼型が基本であり,それに加えてSM2癌に特徴的な所見にも注目した観察が必要であるとした.阿部は深達度診断能を組織型別に検討し,分化型癌と未分化型癌において,その正診率はそれぞれ90.1%と71.8%であったと報告した.また,炎症や浮腫による粘膜下腫瘍様隆起,潰瘍瘢痕による線維化を深読みする誤診が多いことから,深達度診断能はいまだ十分とはいえず,今後さらなる検討の余地があると述べた.柳井はEUSによる検討を行い,EUSで第3層の変化がないか,あっても深さ1mm未満である所見をもってM~SM1癌正診率は96.6%と報告し,誤りの要因の多くは未分化型混在癌の存在で,UL(+)病変の深達度診断についてはEUSの有用性を確認できなかったと述べている.佐藤は症例を中心に典型的なSM2癌や,深達度診断が困難な症例を提示し,深達度診断の実際を述べた.
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