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はじめに
胃ポリープは胃内腔に突出した隆起性病変を意味し,一般的には良性の上皮性非腫瘍性病変に対して用いられる病名である.多くは胃腺の過形成による過形成性ポリープで,以前は腺窩上皮の過形成による過形成性ポリープが多く認められたが,最近では,胃底腺の囊胞状拡張を主体とする胃底腺ポリープの頻度が増加している.胃内にポリープが多発するときは,家族性大腸腺腫症,Peutz-Jeghers症候群,Cronkhite-Canada症候群などの消化管ポリポーシスの可能性があることは,古くから知られている.
腺窩上皮性過形成性ポリープ(以下,過形成性ポリープ)は萎縮性胃炎を母地として発生し,大きい場合は癌化やポリープ内に癌が併存する可能性があり,内視鏡的ポリペクトミーなどの治療対象となることがあるが,多くは良性で経過観察となることが多い.最近ではHelicobacter pylori(H. pylori)感染による胃炎を背景にポリープが発生すること,H. pyloriの除菌により,ポリープが消失や退縮することも知られている1).
一方,胃底腺ポリープはH. pylori非感染の,胃炎や萎縮のない胃粘膜に発生しており2),診断されても胃癌発生の低リスク群として,放置されるか経過観察になっている.しかしながら,胃底腺ポリープは家族性大腸腺腫症の胃病変であることがあり,多発する場合は大腸病変にも注意する必要がある.また,最近,胃底腺ポリープに腺腫を合併した症例や,家族性大腸腺腫症に伴う胃底腺ポリープの癌化例,遺伝子異常が報告されるようになった3).
また,過形成性ポリープと胃底腺ポリープは,プロトンポンプ阻害薬(proton pump inhibitor ; PPI)の長期投与により発生すること4),胃腫瘍に対する内視鏡的粘膜切除術後の瘢痕部に発生することが知られており,ポリープ発生の病態も変わりつつある.さらに,逆流性食道炎やBarrett腺癌が増加し,注目されるようになると,食道胃接合部に発生するポリープも,逆流性食道炎との関係,Barrett腺癌との鑑別病変として注目されている.
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