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概念と分類 消化器腫瘍の新WHO分類(第4版,2010年)では神経内分泌に分化した腫瘍をneuroendcrine neoplasmsと総称し,それに含まれる腫瘍を以下のように分類した(Table 1,1980年と2000年の消化器内分泌細胞性腫瘍の分類を対応させている)1).低悪性度と高悪性度腫瘍に大きく分けられ,従来と比べて分類の概念が明瞭となった.以前,前者は消化管では低悪性度腫瘍はcarcinoid tumor,膵ではislet cell tumorと呼ばれていたが,2000年のWHO分類(第3版)ではwell differentiated endocrine tumor and well differentiated neuroendocrine carcinomaとされた.この分類は言葉と概念に混乱を来したため,今回はこれらをまとめてNET(neuroendocrine tumor)とし,さらに転移の危険性がないか極めて低いものをNET grade 1(旧分類のwell differentiated endocrine tumor),転移を来す可能性のあるものをNET grade 2(旧分類のwell differentiated endocrine carcinoma)とした.高悪性度腫瘍は旧分類でpoorly differentiated endocrine carcinomaとされていたが,NEC(neuroendocrine carcinoma)とMANEC(mixed adenoendocrine carcinoma)に分けた.したがって,NETとNECは生物学的には全く別な腫瘍としての理解が可能となった(Table 1).
神経内分泌腫瘍と内分泌細胞性腫瘍 前述したように,WHOをはじめ世界ではneuroendocrine tumor and carcinoma(神経内分泌腫瘍と神経内分泌癌)と記載されている.これに対し,日本の消化管癌の取扱い規約2)3)では低悪性度腫瘍はcarcinoid,高悪性度腫瘍は内分泌細胞癌(endocrine cell carcinoma;ECC)と記載されている.この中で後者は消化管では多くの場合,粘膜にみられる腺癌あるいは食道では,扁平上皮癌4)が深部浸潤したときに腫瘍細胞が内分泌細胞へ分化した癌となるため,また接頭語として“神経-neuro”がつかないのは,消化管では内分泌細胞は正常腺管の増殖細胞から分化する細胞で,基本的に本腫瘍が神経外胚葉ではなく内胚葉性起源の腫瘍のためである.
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