特集 図説 胃と腸用語集2012
疾患〔腸〕
瘻孔癌(fistula cancer)
池内 浩基
1
,
内野 基
1
1兵庫医科大学炎症性腸疾患センター
pp.775
発行日 2012年5月24日
Published Date 2012/5/24
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1403113353
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瘻孔癌については明確な定義が存在するわけではない.極めてまれな病態であるため,痔瘻癌の定義に準じて,(1) 瘻孔の両側臓器に癌がないこと,(2) 癌が瘻孔形成以前に存在していたという可能性を否定できるほど十分に長い瘻孔歴があること,の2つの条件が一般的に用いられている.Skir1)はゆっくりと発育する癌が瘻孔形成以前に存在したことを否定できるだけの期間,具体的には瘻孔形成より約10年以上経過していれば癌は続発性であり,慢性炎症により引き起こされたと考えてよいとしている.
1990年以降本邦の報告例を,痔瘻癌を除いて医中誌で検索した.21例の報告例があり,最も多い要因は慢性化膿性骨髄炎に起因する瘻孔からの発癌で8例,続いてCrohn病(CD)の内瘻または外瘻に起因する報告が6例あった.最近の欧米の報告では,17年間にCD症例6,058例のうち4例に瘻孔癌の合併があり,CD以外の病態からの瘻孔癌の発生はなかったと報告されている2).本邦においてもCDの長期経過例は増加しており,瘻孔癌合併症例の報告は今後増加することが予想される.CDに合併した瘻孔癌の2症例を以下に示した.
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